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 午後6時30分、間もなく店を開ける時刻が迫ってはいたが、米山は、白い顎鬚をしごきながら、テレビの音楽番組に見入っていた。その日の内容は、アメリカの音楽大賞エリー賞を特集したもので、授賞式の様子が、録画で紹介されていた。

 画面には、ちょうど、正装した日本人の男性が、登壇したところが映し出されおり、画面下部に、彼のプロフィールがテロップで流れていた。

 米山は、感慨深げに呟いた。

「……健介も、とんでもなく出世したもんだな。日本で、勲章もらったと思ったら、今度は、アメリカでトロフィーときたもんだ。伯爵様にでもなるつもりかね」

 健介とは、日本人なら知らぬ者はいない国民的ロックバンド・Since1977[スィンス ナインティーン ダブルセブン]のボーカリストであり、その活躍するジャンルは、ロック、ポップス、ブルース、バラードなど、実に多彩、そして、そのすべての分野で、ミリオンセラーを連発する怪物ミュージシャン・扶桑 健介[ふそう けんすけ]のことである。彼は、世間から、しばしば、“音楽王”と呼ばれ畏敬される。出身地は、湘南・茅ケ崎の南湖[なんご]、男気の町である。