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「……本当、たいしたもんだな。あの野球バカが、バットをギターに持ち替えたら、大ヒットの連発、バッティングもあれくらいうまければ、甲子園で優勝するのも夢ではなかったろうに。……皮肉なもんだ」

 米山は、健介の高校時代を、よく知っていた。地元茅ケ崎の高校には、進学せず、横浜の野球では一流と呼び声の高い私立の名門“白鳳学園”で、野球三昧の青春時代を過ごした。練習熱心で、いつも二の腕から先ばかり日焼けしており、海で焼いているのではないことは誰の目にも明らかだった。

「風月堂のおばちゃんも、テレビ、観てるかな…… 我が子のように、世話してたからなぁ。きっと、うれし泣きしてるにちがいない……」

 米山は、大切なことを思い出したかのように、古い壁掛け時計に目をやった。時間は、すでに、6時50分。あと10分後には、開店だ。

「……もうこんな時間か。看板出さなきゃな」

 米山は、まだ、準備中ではあったが、店内に置いてあるスタンド看板を抱え、階上の通りに出た。